ある日。
スタッフと一緒にマラケシュの生地問屋街を歩きました。
「最近は中国からの輸入生地ばかりだね。みて、このキラキラの生地・・・こういうの最近流行っていて残念」
問屋街にずらりと並んでいるのは、モロッコ人向けのインテリア生地なのですが、昔は外国人がモロッコらしいと思う生地が多かったのに、最近は、いかにも大量生産的な生地ばかり。いわゆるオリエンタルな雰囲気のものではなく、金銀色や虹色が織り込まれた派手で安い雰囲気の生地が増えています。
何か作りたいと感じる生地、中々無いなあと思いながら、一軒一軒お店を見て歩いていた時に出会ったあるお店。
地味で、営業しているのかどうか分からない店構えの中には、真っ白な髭が素敵なおじいさんが一人。
思わず、「古時計」の歌詞が浮かぶ様な店内には、良い色合いの生地が無造作に積まれています。
「これは何メートルありますか?」「そうだねえ、3メートルくらいかな、ちょっと測って見るから端っこ持ってて」「3m10だね。10はおまけしておくよ」
「こっちは・・・丁度2mだね」
古い生地なので仕方が無い事ですが、在庫を全部貰っても、バブーシュほんの少ししか作れません。
ちょっと迷いましたが、少しでも作りたいと思い、気に入った柄を幾つか分けて頂きました。
せっかく貴重な古い生地を使ったバブーシュだから、端の処理も丁寧に。
この、オレンジ色の端の部分、メートル幾らで買って来た市販品に見えますが・・・実は色を指定して、バブーシュに編み込んでもらっています。元々は、モロッコの伝統的な民族衣装の端の始末に使われる、贅沢な仕上げです。
ここの部分にとても時間がかかるので、縁無しも考えたのですが、やっぱりあった方が可愛いので一工程プラスしています。
お花の柄と渋い色使いが素敵です。
懐かしい雰囲気の貴重な生地を使ったバブーシュ・ジッディ、数種類アップロードしました。
古いものがお好きな方、ヴィンテージと聞くと反応してしまう方は是非ご覧下さい。