ベーシックな食材をクリエイティブに料理したい~Anat / restaurant Beba

前にオーナーのインタビューを掲載したイスラエル料理レストランBeba。 仕事で追加の写真が必要になったので、今度はシェフにインタビューしてきました。     「私の名前はAnat。イスラエル出身で、4年前にベルリンに来ました。ここに来た時は、ヨーロッパの素晴らしいレストランの素晴らしいキッチンで働く夢を持っていました。大きな町の偉大なシェフから何か素晴らしいことを学べると期待して来ました」 「実際に大きなレストランで働き始めたのですが、正直言って、なんと言えばいいのでしょう?少しがっかりしました。 ベルリンのドイツ料理は、オールドファッションで、遅れているというか・・・あまりクリエイティブとは言えなくて。 私は高級レストランにはあまり興味がないんです。世界中から取り寄せた超高級食材を使った100ユーロとか150ユーロとかの料理には興味がありません。 そういう料理を作って食べてもらうことがまともなことだと思えなくて。 シェフとしては変な考えですよね。でも、私はベーシックな食材をクリエイティブに料理して、誰もが食べられる価格の食べ物を作りたいんです。 発酵させたり、ピクルスにしたり、ゆっくり長時間料理したり、スパイスを使ったり、組み合わせを考えたり。美味しい料理を作るための可能性は無限にあります」 最初のレストラン 「料理、食べることの基本は家族から学びました。小さい時からキッチンを手伝うことが大好きで、17歳でカフェのキッチンで働き始め、いくつかのレストランで働いたあと、22歳で小さなレストランを、小さいけれど自分のレストランをレホヴォトにオープンしました。 レストランの周りには工場がたくさんあって、毎日のランチにはお腹をすかせた人たちがたくさんやってきました。 彼らが求めるのは、シンプルで美味しくて、お腹がしっかり満たされるものです。イスラエルは、世界中から移住してきた人たちでできた国なので、食の選択肢も多く、味にうるさい人も多く、このレストランでの経験から学ぶことはたくさんありました」 ベルリンでイスラエル料理を作る 「ベルリンに来てから2年ほど、大きなレストランで働きましたが、あまり刺激がなかったので、自分で仕事をするべきだと思いプライベートシェフになりました。ベルリンには大きなユダヤ系のコミュニティーがあって、彼らのイベントやパーティーのために料理をしました。私が作るのはイスラエル料理で、お客さんはユダヤ系なのですが、でもドイツで暮らしているから、イスラエルのイスラエル料理そのままでもダメなんです。 どんな風にアレンジすると、イスラエル料理がドイツで受け入れられるか、色々工夫しました」 「Bebaのオーナーのシャニと知り合った時は、彼女は自分のレストランをオープンするための場所を探していました。いくつか一緒にイベントを手がけて、色々な意味で相性が良いことがわかったんです。同じ味、同じ感覚、同じものの見方を持っていることに気がつきました。その後、美術館の中のレストランの話が来て、一緒にプレゼンテーションをして・・・・始まりました」 Infarmの野菜 「シェフにとって、infarm の野菜やハーブと働くことは特別なことです。 普通、こんな新鮮な野菜を手に入れるチャンスはありません。 私にとってはすっかり普通のことになってしまいましたが、普通のシェフは、何日か前に収穫した、ビニールに入った野菜やハーブを受け取って料理します。 私たちは、ゲストに出す数分前に根から切り取ったばかりの野菜を料理します。 今、私たちのところには21種類のハーブや野菜がありますが、この中には、普通はなかなか手に入らない、珍しいハーブもあります。からし菜やわさび菜のような日本の味を楽しめるハーブも育てていますし、イスラエル料理には欠かせないマウンテン・コリアンダーもあります。一般的なコリアンダーよりも味や香りもとても強くて、仕上がりが全然違うんです。 いつも同じものを育てているのではなく、infarmと協力し合いながら、お客さんが好むもの、私たちが使いたいもの、ここの環境に合うもの、合わないもの…を入れ替えています」 持続可能な食について 「食品廃棄物ゼロですと言いたいけれど、残念ながらゼロではありません。 でも、例えばオレンジジュースを作った後のオレンジの皮でオレンジピールやママレードを作るなど、クリエイティブに考え工夫して、できる限り廃棄物を出さないようにしています。ベルリンに来て、大きなレストランで働いていた時も、周りの人たちの環境意識は他の国に比べると高かったと思います。プラスチック、紙、生ごみを分けるという基本的なことだって、出来ていない国はたくさんありますから。 ただ、問題はレストラン業界の利益システムというのは非常に複雑で、経済的にギリギリのレストランも多いんです。食品廃棄物をできるだけ出さない料理には余分の時間がかかります。時間がかかるということは、余分の人件費、費用がかかるということなので、もっと工夫したいと思っていても、現実問題としてなかなか難しいということだと思います。ドイツの人件費はとても高いですから。 だから、私たちのチャレンジ・・・廃棄物をできるだけ出さないようにする。普通に食べてもあまり美味しくない食材を工夫して料理する。そういうことができていることを誇りに思います」 オレンジのサラダ 「撮影用に、私が一番気に入っているサラダを作りますね。 野菜は・・・その時の気分でいい野菜をミックスして、オレンジ、グレープフルーツ、チェリートマト、ラディッシュ。トップには鶏の胸肉を60度の低温でスロークッキングしたものを香りを出すために一瞬炙ったものを載せます。 オリーブオイル、オレンジジュース、レバノンのデイツシロップと塩胡椒の軽めのソースと最後にオレンジピール、チリ&塩とカラメライズしたウォールナッツを載せて完成」 「デイツソースは、イスラエルでは一般的に使われます。 私は白砂糖の代わりによく使います。少し高いけれど、味が良いから。このソースはレバノンのものだと思います。 イスラエル料理には中東風のフレーバーをたくさん使うし、ベルリンではアラブ人の業者から購入することも多いです。 私の父はモロッコで生まれて、5歳でイスラエルに移住しました。 私のモロッコのルーツは、ほとんど意識しませんが、でも私が作る料理にはモロッコの影響があります。毎週月曜日には、一からクスクスを作って出しています。平日の昼は、近所のオフィスで働く人たちがたくさん来るのですが、彼らは軽いサラダじゃなくてしっかりしたものを食べたがるので、日替わりランチを出しています。例えば今日のランチは、サーモンをタイムと塩レモンで料理したものですが、サーモンはとてもヨーロッパらしい食材で、タイムと塩レモンは、エスニックな食材で・・・それが出会ってとても素敵な味になるんですよ」 Anatは昔、イスラエルにある和食店で働いていた。 その時から和包丁を使い始めたと、彼女専用の包丁を見せてくれた。ピカピカに研がれたよく切れそうな包丁。 「この包丁と、ハチマキ、それからキッチンの掃除の仕方について学んだことは私の財産です」 繊細さと強さを併せ持つ彼女の料理はやっぱり繊細で、でも弱々しくない。 それぞれの素材の味が引き立っていて、一口食べるごとに体が喜ぶ、そんな料理だ。実は彼女は10ヶ月の赤ちゃんの母親でもある。 赤ちゃんを育てながら、レストランのオープニングシェフになる。 想像しただけで気が遠くなりそうだけれど、タフさや真剣さとともに仕事を楽しんでいる楽しさが生き生きと伝わってきて楽しいインタビューだった。 「おいしいご飯は、仕事を楽しんでいるスタッフから生まれるの」 キッチンに二時間ほど居たけれど、とても楽しそうに、かつプロフェッショナルに働いているスタッフたちが印象的だった。

子供時代に食べた野菜の味が忘れられない〜 Vegan restaurant Kopps / Ilhami

ベルリン・ミッテ。ベルリンでは最も知られた高級ビーガンレストランの一つKoppsのオーナー、イルハム・ティルジ氏をインタビューして来た。 Koppsに食事に行った時の記事はこちら。 インタビュー申し込みメールへの返信の署名にトルコ系の名前を見て、正直驚いた。私の中でのトルコ人、トルコ系の人々は肉をたくさん食べる人たちで、ビーガンとトルコがうまく結びつかなかった。 「私の両親は、1960年代にトルコからドイツに来ました。私は南ドイツ、シュトゥットガルト近郊の小さな街で生まれました。17歳から3年間、ホテルマンになるための学校に行き、15世紀の城を改築した美しいホテルで働きました」 第二次世界大戦後のドイツには、各国からたくさんの出稼ぎ労働者がドイツにやってきて、復興の手助けをした。1961年にトルコとの間に協定が結ばれると、多くのトルコ人が海を渡り、その多くはドイツに根を下ろした。イルハム・ティルジ氏は、ガストアルバイターの二世。一世である親の多くは、家庭ではトルコ語を話し、トルコ人社会の中で生きる人が多いが、二世以降はドイツで生まれたドイツ人で、学校ではドイツ語、家庭ではトルコ語を話す。     「24歳の時俳優になりたくてベルリンに出て来ました。3年間、演技の勉強をして、小さな劇場で働き始めましたが、私の顔は、人々が期待するステレオタイプのトルコ人の顔でもなければ、ドイツ人でもないので、良い役を得ることが難しかったので、ほとんど無職のようなものでした。南ドイツの子供時代は差別らしい差別を経験しませんでしたが、ベルリンでは色々ありました。俳優をしながら始めたテクノパーティーのプロモーター業が軌道に乗り、プロモーターとして10年働きました」   1989年の東西ドイツが統一以降の90年代のベルリンのクラブシーンは、今よりももっと過激。予定調和など全くない、リハーサルなしの舞台のような場所だっただろう。 いまのベルリンでヨガやビーガンフードなどのリーダー格の人々は、この時代に遊び尽くした40代後半から50代が多い。彼もその一人なのかもしれない。     「2005年に、1件目のレストラン、”Boetzow Privat”をオープンしました。19世紀の建物を使った、ドイツ料理パブです。2件目を出すときに、50年後も続いているような、何か特別な要素があるレストランにしたいと思いました」 「90年代にベジタリアンを試したことがありますが、いまは少量の肉も食べます。それでも、食の持続可能性を実現するためのレストランとして、高級ビーガンレストランは面白いと思ったのです。Koppsを企画し始めたのは2009年ごろですが、ベルリンにはビーガン専門レストランはほとんどありませんでした。今では誰も彼もがビーガンだったり、ビーガンに興味を持っていますが、当時は誰も興味がなく、友人たちは反対しました。2011年にオープンしてからも経営は簡単ではなく、注目が増えうまく回るようになってきたのは本当にここ数年のことです」     ビーガン料理というと、大豆ミートを使った様々な料理が思い浮かぶが、Koppsには、大豆ミートをつかったものは見当たらない。 大豆自体も問題が多い食材だし、「肉のようなもの」をサービスするのではなく、野菜をたっぷり使ったクリエイティブなものをサービスしたいという。 「私の家族はトルコ系です。 食べ物に関する子供時代の思い出は・・・まずは年に一度の犠牲祭という祭りです。この祭りの時に、両親は羊や牛を屠ります。イスラム教の宗教的習慣なのですが、ドイツで生まれ育った私や私の兄弟にとってはトラウマになるような経験でした。私はビーガンのレストランを経営していますし、妹も弟もベジタリアンです。子供の頃の経験が影響しているのだと思います」 「野菜に関しては素晴らしい思い出があります。 私の両親は、畑を持っていて、自分たちが食べるための野菜や果物を作っていました。畑で採れたばかりのトマトはとても美味しく、良い香りがして、そのままで十分美味しかったです。外国から輸入されて来たトマトは形はきれいでも、味が薄くてどうして人々は味がないトマトを食べたがるのだろうと子供心に不思議に思っていました。庭の野菜の味は私の原点になっている気がします」 Koppsではベルリン近郊のポツダムの農場で育てられた有機野菜を使っている。 ここの野菜は、やっぱり彼の子供時代の野菜と同じような生き生きとした味と香りがするそうだ。私がいただいたお料理の野菜も、特にミニトマトの酸味とトマト本来の旨味のバランスが素晴らしく、幾つでも食べたいくらいだった。     Koppsでは、毎週火曜日の夜、Come togetherというイベントがある。 普段は一人ドリンク抜きで50ユーロ程度からの高級ダイニングだが、火曜の夜だけは25ユーロで3コースメニューを楽しめる。 Come togetherの特徴は、レストラン中央の大テーブルに、 Come together 参加者12人が一緒に座り、同じタイミングでコースメニューをいただくこと。 知らない人と一緒に食べましょう、という「共に食べる」イベントなのだ。 「Koppsは、開業以来料理のクオリティを上げ続けていて、クオリティを上げると必然的に値段も上がってしまう。ある時、ディナーには若い人が来ていないことに気がついたんです。彼らには値段が高くて払えない。だから、彼らが来れる程度の値段でディナーをサービスしたいということが一つ目の理由」 「二つ目には、色々なバックグラウンドを持つ人々に一つのテーブルに座ってもらい、一緒に食べて欲しいという意図があります。例えば、ビーガンもビーガンじゃない人も、興味がある人も、ドイツ人も外国人も、様々な年齢層の人たちがみんな一緒に集まって食事をしたらいいんじゃないかと思いました。夏は旅行者が多いから英語の会話がよく聞こえてくるし、冬はドイツ人が増えますね。ビーガンとノンビーガンの割合は半々くらい。私がレストランにいるときは、テーブルに挨拶に行きますが、お客さんに自己紹介をしてもらったり、一言話してもらったりすることもあります。飲み物は別なので、ドリンクを選びながら、知らない人同士の間に自然に会話が始まることもあれば、シャイなドイツ人同士、テーブルの端と端に座って、全く会話しないこともある」   私がCome togetherに参加した時も、最初はちょっと硬い雰囲気だったけれど、同じ鍋を囲まなくても、同じタイミングで同じ料理を食べるというだけでも親しみが湧いてきて、デザートの頃には知らない人同士、結構話が弾んでいた。 私がモロッコで長く暮らしていたためにそう感じるのかもしれないけれど、Koppsには、一見してトルコ料理やトルコ風の要素は全くないけれど、「みんなで一緒に食べる」というのがドイツというよりも、トルコとかイタリアとかギリシャとか、そういう暖かい国の人の発想だなあと思ったし、「肉を食べることがステイタスであるトルコの感覚」に反発を感じたことが持続可能性やビーガンレストランにつながって来たことがとても面白いなあと思った。モロッコ人と日本人のハーフの娘に料理の写真を見せたら、「可愛い!なんかちょっとモロッコみたい」と言っていた。   「大量の肉、大量生産の食品を使い捨てにしていくレストランビジネスは、これからは続いていくわけがないと思います。私たち全員が持続可能性についてもっと考えなくてはならないと思います。ビーガンの人も、ノンビーガンの人も、Koppsに来てこんな食べ方の可能性があるということを経験して欲しいと思います。 ここでは、自然発電の電力、バイオガスを使い、食品ももちろん地産地消のものを使っています。プラスチックは使わないようにしています。 例えばワインですが、9割のワインはドイツ産で、ほとんどはオーガニックかビオダイナミックのワインです。酸化防止剤が入ったワインは去年から扱いをやめました」 「毎日は、何を食べるか、どこからきたものを食べるかの決定で成り立っています。食べているものがどこからきていて、何を食べているのか、を意識しつつ、食べることを楽しむことが大事だと思う。私はたまに断食をしますが、断食すると食べ物の味や食べることの意味を実感することができ、食をより楽しむことができます」 Koppsに食事に行った時の記事はこちら。     旅行中は野菜不足になりがち。ビーガン、ベジタリアンの人はもちろんのこと、そうでない人も、お野菜をたっぷりいただきたい、という時にオススメ。観光地の真ん中にあり、アクセスも良い。 Come together 祝日や特別な日を除く毎週火曜日18:00から 3コースメニュー25ユーロ(飲み物別) 週末ブランチ:18ユーロ 夜のアラカルト スターター5ユーロから メイン18ユーロから デザート12ユーロから Kopps Linienstraße 94 10115 Mitte Berlin Tel.: (030) 43209775 https://www.kopps-berlin.de/en/ 営業時間: 月曜〜金曜:18:00~22:00 土曜&祝日: 9 : 30〜22 : 00 日曜日:09 : 00〜18 : 00 カードOK(通常メニューのみ。ブランチ、Come togetherは現金のみ) Come togetherは予約不可。通常のディナーは要予約。 S-Bahn Hackescher Markt から徒歩12分 U-Bahn 8 Rosenthaler Platz から徒歩4分  

子育てしながらスタートアップで働き、レストランをオープン〜Shani from Restaurant Beba

2019年3月にマーティン・グロピウス・バウ美術館の中にイスラエル料理レストラン、Bebaをオープンした、Shaniの話を聞いて来ました。 私の名前は Shaniです。 私の祖父母は、ロシア、フランス、モロッコ、トルコからアルゼンチンに来ました。当時、経済的な理由や、迫害が理由でアルゼンチンに移住するユダヤ人が多かったんです。そして、両親はアルゼンチンからイスラエルに移住して、私が生まれました。 子供時代はイスラエルで過ごして、ダンサーになるためにアムステルダムに行きました。アムステルダムでは、ダンサーとして活動する傍ら、料理ばかりしていました。友達や友達の友達のために料理をすることが大好きで、いつのまにか副業でケータリングの仕事もするようになって、いつも頭の中は料理のことでいっぱいでした!次は何を食べよう、何を料理しよう。 あの友達には何を食べさせよう。そろそろ***の季節だわ・・・と。 インファームの4年間 アムステルダムには8年いて、その間に結婚しました。 そろそろ新しいことをしたい、新しい環境に身を置きたいと思った時に、ベルリンで仕事のオファーがあったんです。夫も私も。 友達もいたし、ベルリンは大好きな街だし、じゃあ引越ししようということになりました。とてもワクワクしました。 ベルリンではスタートアップの小さな会社で働き始めて、翌年息子が生まれました。 産休中に室内水耕栽培のスタートアップ、インファーム(*1)の創業メンバーと知り合いました。意気投合して、出産したら一緒に働こうと誘われて、産後はインファームで働き始めました。 今ではずいぶん大きくなったけれど、当時は本当に始まったばかりで、私はプロジェクトマネージメントとマーケティングを担当ということになってはいましたが、なんでもやりました。インファームには4年居て、一緒に成長しました。 創業時は、3人の創業者の情熱があふれて居て、特別な雰囲気でした。 試行錯誤の毎日でした。何ができて何ができないのか。ベストな形は何か。実験して失敗して、また実験して・・・ 野菜やハーブを都市で育てたいという、本当にざっくりとしたアイデアから始まったインファームですが、食品業界に大きなインパクトを与えるためには、大企業と協力し合わないとダメだという結論になったんです。 それでまた、大企業と仕事が始まって・・・ 手作りの実験から始まったものが、4年でたくさんの人や会社を巻き込む規模に成長していく様子を見るのは最高にエキサイティングでした。 今息子は5歳で、私がインファームで働いていた頃は、まだ小さかったけれど、16時まで保育園に預けて、夕方は夫と交代で役割をシェアし合いました。 ものすごい勢いで成長するスタートアップで働きながら子育てすることは…簡単なことではないけれど、不可能なことでもありません。 当時のインファームは、本当に小規模で、家族のような雰囲気だったから、子連れで出勤することもできたし、みんなよく可愛がってくれました。 仕事を持つ母親であることは、子供にとっても、仕事にとっても良いことだと思います。限られた時間を計画的に、有効に使おうと思うし、本当に大切なことは何かよく考えるようになります。 そして、子供はたくさんの気づきやエネルギーを与えてくれます。母親として、子供がいるから頑張ろう、しっかり仕事をしようというモチベーションになります。 私自身が子供の頃、母親はフルタイムで働いて居ましたが、母は、帰宅すると私としっかり向き合ってくれたから寂しいとは感じませんでした。 だから私も、息子としっかり向き合う時間をできるだけ取るようにしています。 インファームでの仕事はとても充実していましたが、もっと直接人に食べさせる仕事をしたい、自分のレストランをオープンしたいという気持ちが強くなり、独立するタイミングだと思いました。そこで2018年の4月に退職を決め、レストランを開業できる場所を探して居た時に、シンシア・バルコミと知り合いました。彼女はベルリンでは有名なアメリカ人のカフェのオーナーです。知り合ってすぐに良いコネクションを感じて、顔を合わせて10分後に、「良い場所を知っている」と話してくれたのが、このマーティン・クロピウス・バウ美術館でレストランを開く可能性でした。 出会った2日後に、シンシアは美術館の館長のステファニーに私のことを話し、その1週間後、私はここにきて計画書をだし、2週間後シェフのアネットと一緒にテイスティング・ディナーを開催し・・・会議やペーパーワークや色々の後、ここでオープンすることになったんです。素晴らしい偶然が重なって。 レストランBeba Beba は私の祖母の名前で、全ては彼女から始まったんです。 彼女はとても料理が上手で、家族に美味しいものを食べさせることに常に情熱を注いでいました。とてもエレガントな人で、キッチンに立つ時もちゃんとおしゃれして、赤ワイン片手に料理をするような人でした。 私にとっての美しい女性のお手本です。 もちろん、料理の味付けも盛り付けも繊細で、大きな影響を受けました。 Bebaに食事に来た人には、おばあちゃんの家にきて食事をしたような気持ちになって欲しいんです。 気持ちのよい空気が漂っていて、心がこもっていた料理を食べて、笑顔のスタッフに迎えられる。料理も飲み物も全て自家製で… 良い香りを楽しんで、きちんと栄養をとって。 気持ちの良い空間で良いものを食べた後は、身も心も幸せになる。 食事した後、何時間もハッピーでいられる料理を出したいと思っています。 レストランの空間も、サービスも、料理も飲み物も、お客さんに「あなたのことを思っています」というメッセージなんです。おばあちゃんの料理みたいに。 レストランとお客さんが、そんなエモーショナルな結びつきを持てることが私の理想です。 だから、特に重要だと思っていることは、なんでも自分たちで手作りすることです。 例えばピクルスは全て自分たちで漬けているし、ソースも、ディップも全て手作りです。 そして、もちろんインファームの野菜です。 ここで育ったばかりの新鮮な野菜を出します。 お客さんは、美術館に来たついでにたまたま来た人もいるし、近所のビジネスマンもいます。 かなりメディアには取り上げられているので、私たちのことをどこかで読んだり聞いたりしたという人もいます。初めて来た人はみんな、インファームのスマート・ガラスケースについて質問して、驚いて、夢中になります。 目の前で育ったものを食べるというアイデアが珍しくて楽しいし、店の中で育っているものと、自分のお皿に乗っているもののつながりを感じることが素敵だと感じるからです。 インファームの野菜は、すでに完成された素材なので、その繊細な味わい、感触をできるだけ生かして壊さないように細心の注意を払っています。 野菜と野菜やハーブの組み合わせを工夫するだけで素晴らしい味になります。 持続可能な食について 私はビーガンでもベジタリアンでもありませんが、肉を作るための膨大な資源の無駄のことを考えて、あまり食べないようにしています。 できるだけ地産地消の食品を使うようにしています。 廃棄食品の問題については、シェフのアネットが素晴らしくて、私たちのキッチンからはほとんど無駄が出ません。 メニューの組み立て、何をどれだけ仕込むか、どんな風に保存するか。 無駄を出さないと決めて、きちんと考えれば、かなりの廃棄食品を減らすことができます。これもおばあちゃんの知恵ですよね?昔の人は何も無駄にしないように工夫しました。 それから、そのまま食べても美味しくない食材を、いかに美味しく食べるかということにも、工夫の余地はたくさんあります。 例えば私たちのビーフサンドイッチに使っているビーフは、硬くてあまり人気がない部位なのですが、スパイスと一緒に6時間かけてスロークッキングすることで、柔らかく美味しくなります。Bebaの人気メニューです。 これもおばあちゃんの知恵かもしれませんね。 インファームで働いた4年間で、持続可能な食についてはたくさんのことを学びました。もちろん、インファームの野菜やハーブ自体を使うことも、資源の節約につながっています。 スタッフからも毎日のように様々なアイデアが出て来ます。 これはこんな風に使えるんじゃないか、こうした方がいいんじゃないか・・・ 無駄遣いをしない、食べ物を大切にするということがみんなの共通目標になっています。 サンドイッチ 8ユーロから サラダ 15ユーロから メイン12 ユーロから イスラエルのタパス単品7ユーロ。三品で15ユーロ。 ホームメードケーキ4.5ユーロから エスプレッソ2.8ユーロなど Beba (Martin Gropius Bau ) https://www.facebook.com/Beba-at-Gropius-Bau-309194473058929/ 火曜定休 10:00~19:00 Niederkirchnerstr. 7 10963 Berlin カードOK   チェックポイントチャーリーの直ぐ近く。観光の中心なのでアクセスしやすいです。 (*1) インファーム:infarmは、今ベルリンで最も注目されているスタートアップ企業の一つ。自社クラウドコンピューターとつながった室内水耕栽培システムをスーパーマーケットなどに置き、新しい形の地産地消に取り組む。 https://infarm.com/

やってみたら簡単だから、世界中に廃棄物ゼロレストランが広がってほしい~ Frea / David

Frea は、2019年3月にオープンしたばかりのベルリン初の「ZERO WASTE 廃棄物ゼロ」 ビーガン・レストラン。オーナーのDavidにインタビューした。     1987年、壁が崩壊する2年前の東ベルリン生まれ。もちろん、東ベルリン時代のことは何も覚えていないが、親からは常に聞かされて育った。 「レストランをオープンするまでのストーリーを聞かせてください」 「4.5年前に、イベントのためのケータリングビジネスを始めた。 ケータリングを始めて1年後には250人のイベントのために料理するようになった。JOHNNY AND THE FOODというブログをはじめ、you tube に料理についての動画をアップし、ホリスティックヘルスコーチの資格も取った。 ケータリングの仕事が軌道に乗って、月に5000ユーロは稼げるようになったんだけれど、同じことの繰り返しで快適すぎて、新しいことにチャレンジしたくなった。快適な状況は嫌いなんだ。 難しいことに挑戦して、できた時の達成感が好きなんだ。 だから、新しいことにチャレンジすることにした」     「3年前から廃棄物ゼロ・Zero wasteについて考えていて、これはチャレンジになるって思った。すでに、プラスチックを使わない暮らしを実践していたから動画に撮ってyou tubeにアップしてみたら、反応がよかったからこれはいけると思った。 Zero wasteを実践するなら、自分ひとりでするんじゃなくて、周りの人たち、友達、家族、お客さん、環境にできるだけインパクトを与えたい。そう考えて、Zero waste、地産地消、季節のものだけを使ったレストランをオープンすることを思いついた。僕にとってはZero wasteとビーガンはセットだから、レストランをやることを決めた時に禁煙・禁酒してビーガンになった」   廃棄物ゼロのレストランをオープンするまで 「仕組みを知るために、ロンドンのZero wasteレストランで10日間働いた。帰って来て企画書を書いて、2017年の10月に動画を撮って、シェフに声をかけて、年末に今のガールフレンドと出会って2018年4月には彼女と一緒にレストランを始めることにして、物件を見つけた。工事に7ヶ月かかって、2019年3月にオープンした。 開業資金を集めるために、いろいろなところに企画書を持ち込んだけれど、当時は誰も興味を持たなかったから、GFと二人、有り金を全て注ぎ込んだ。 今なら、レストランがうまくいっているという実績ができたから、もっと簡単に資金調達できるだろうけれど」   「”Zero wasteのビーガン・レストラン”というと、可能性を狭めているように聞こえるかもしれないけれど、本当はその逆だ。縛りがあるからこそ、さらにクリエイティブになれる。Zero wasteのビーガンが、ビジネスとして成り立つということを世の中に示せたことは本当に良かったと思う。もっと客単価を高くしてもいいという人もいるけれど、ランチ10ユーロ前後でカジュアルに食べられることに意味がある。持続可能な生活をしたいと思っている人はたくさんいる。彼らが “今日は家で料理したくないな” と思った時に気軽に来られるレストランにしたいんだ。 ビーガンは金持ちのものだと言う人もいるけれど、そんなことはない。やり方を知っていれば誰でも簡単に実践できるライフスタイルだ」 「レストランはとても流行っている。今日も明日もディナーに100人の予約が入っている。将来、ベルリン以外の街に店を出すかもしれない。 ベルリンにはFreaのスタイルが似合うけれど、別の街には別の街のスタイルがあるだろう」 「お客さんはの反応はとてもいい。気に入らない理由がないだろう? 店の内装は、家庭的な、実家を思い出すような場所にしたいと思った。 家具、グリーン、カトラリー、料理、照明、味、飲み物・・・全てが懐かしい感じを醸し出している。 家具も、新しいものをわざわざ用意するんじゃなくて、できるだけ持続可能なものを集めた。ebayでユーズドを探したり、天然素材のものを集めたり。例えば、このランプシェードは、マッシュルームから作られていて、いつでもコンポストにできるんだよ。面白いだろう? 全部GFと二人で選んだ」 「スタッフには、何が大事か、何を目指しているのか常に伝えるようにしている。最初の1年間は、毎日来て、店が開いている時間はずっと張り付いているつもりだ。今自分たちはオリジナルの宇宙を作り出している最中だから、ひと時も目を離さずに、ずっと見ていたいんだ。 どこから来たのかわからない材料をただ温めて混ぜて完成というレストランがたくさんあるけれど、Freaのシェフは何をしなければならないのか良く分かっている。丁寧に繊細に。ジュースとアルコール以外は全部自分たちで作っている」   「 “廃棄物ゼロ”は、ただ単に廃棄物を減らせばいいっていうだけじゃない。 廃棄物ゼロは哲学だ。もっとクリーンに、もっと環境によく、もっとサスティナブルにというメッセージだ。 食品について、本当にそれが必要か、いつ必要なのか、本当に必要なのか考える。 どこからきた食品なのか、どうやって運ばれてきたのか、どうやって育てられたのか気にして食べる。 例えば、アボカドは、環境にとても悪いから、絶対に扱わない。 アボカドが育てられているのはカリフォルニアの雨がほとんど降らない地域なのに、大量の水を必要とするから、アボカドを育てるためにパイプラインを引いて水を与えているんだ。アボカドのために。信じられないだろう?」 「やってみたら簡単だから、世界中に廃棄物ゼロレストランが広がってほしい」 野菜くずや残飯などの食品廃棄物は、全てコンポストに入れられて、24時間後には肥料になり野菜の仕入れ元の農場に返される。また、ここではプラスチック類は一切使われていない。野菜などの素材はそのまま運ばれて来る。 週替わりランチのメインは二種類から選ぶようになっている。 メニューをいろいろ用意しすぎないのも、食品廃棄物を減らすための工夫だろう。 ここにお客さんとして来た時にいただいたブロッコリー&椎茸のパスタは本当に美味しかった。ちゃんと、一つ一つの素材の味が引き立っていて、ベルリンでは珍しい歯ごたえ、食感が楽しめる味だった。 ランチ&ディナー 月曜から金曜: 12~15 週替わりランチ 火曜から土曜:18~22 ディナー 予約推奨 スターター:4ユーロから メイン:9ユーロから ランチメニュー小:13ユーロ(その週のスターター&おすすめメイン&飲み物) ランチメニュー大:16ユーロ(その週のスターター&おすすめメイン&デザート&飲み物) Frea https://www.frea.de/ Torstraße 180, 10115 Berlin Mitte   ベルリン・モロッコについての記事を書いています。 今までのお仕事リスト(日本語) Kaori Miyamoto’s writing work (En)

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