子供時代に食べた野菜の味が忘れられない〜 Vegan restaurant Kopps / Ilhami

ベルリン・ミッテ。ベルリンでは最も知られた高級ビーガンレストランの一つKoppsのオーナー、イルハム・ティルジ氏をインタビューして来た。

Koppsに食事に行った時の記事はこちら。

インタビュー申し込みメールへの返信の署名にトルコ系の名前を見て、正直驚いた。私の中でのトルコ人、トルコ系の人々は肉をたくさん食べる人たちで、ビーガンとトルコがうまく結びつかなかった。

「私の両親は、1960年代にトルコからドイツに来ました。私は南ドイツ、シュトゥットガルト近郊の小さな街で生まれました。17歳から3年間、ホテルマンになるための学校に行き、15世紀の城を改築した美しいホテルで働きました」

第二次世界大戦後のドイツには、各国からたくさんの出稼ぎ労働者がドイツにやってきて、復興の手助けをした。1961年にトルコとの間に協定が結ばれると、多くのトルコ人が海を渡り、その多くはドイツに根を下ろした。イルハム・ティルジ氏は、ガストアルバイターの二世。一世である親の多くは、家庭ではトルコ語を話し、トルコ人社会の中で生きる人が多いが、二世以降はドイツで生まれたドイツ人で、学校ではドイツ語、家庭ではトルコ語を話す。

 

 

「24歳の時俳優になりたくてベルリンに出て来ました。3年間、演技の勉強をして、小さな劇場で働き始めましたが、私の顔は、人々が期待するステレオタイプのトルコ人の顔でもなければ、ドイツ人でもないので、良い役を得ることが難しかったので、ほとんど無職のようなものでした。南ドイツの子供時代は差別らしい差別を経験しませんでしたが、ベルリンでは色々ありました。俳優をしながら始めたテクノパーティーのプロモーター業が軌道に乗り、プロモーターとして10年働きました」

 

1989年の東西ドイツが統一以降の90年代のベルリンのクラブシーンは、今よりももっと過激。予定調和など全くない、リハーサルなしの舞台のような場所だっただろう。
いまのベルリンでヨガやビーガンフードなどのリーダー格の人々は、この時代に遊び尽くした40代後半から50代が多い。彼もその一人なのかもしれない。

 

 

「2005年に、1件目のレストラン、”Boetzow Privat”をオープンしました。19世紀の建物を使った、ドイツ料理パブです。2件目を出すときに、50年後も続いているような、何か特別な要素があるレストランにしたいと思いました」

「90年代にベジタリアンを試したことがありますが、いまは少量の肉も食べます。それでも、食の持続可能性を実現するためのレストランとして、高級ビーガンレストランは面白いと思ったのです。Koppsを企画し始めたのは2009年ごろですが、ベルリンにはビーガン専門レストランはほとんどありませんでした。今では誰も彼もがビーガンだったり、ビーガンに興味を持っていますが、当時は誰も興味がなく、友人たちは反対しました。2011年にオープンしてからも経営は簡単ではなく、注目が増えうまく回るようになってきたのは本当にここ数年のことです」

 

 

ビーガン料理というと、大豆ミートを使った様々な料理が思い浮かぶが、Koppsには、大豆ミートをつかったものは見当たらない。
大豆自体も問題が多い食材だし、「肉のようなもの」をサービスするのではなく、野菜をたっぷり使ったクリエイティブなものをサービスしたいという。

「私の家族はトルコ系です。
食べ物に関する子供時代の思い出は・・・まずは年に一度の犠牲祭という祭りです。この祭りの時に、両親は羊や牛を屠ります。イスラム教の宗教的習慣なのですが、ドイツで生まれ育った私や私の兄弟にとってはトラウマになるような経験でした。私はビーガンのレストランを経営していますし、妹も弟もベジタリアンです。子供の頃の経験が影響しているのだと思います」

「野菜に関しては素晴らしい思い出があります。
私の両親は、畑を持っていて、自分たちが食べるための野菜や果物を作っていました。畑で採れたばかりのトマトはとても美味しく、良い香りがして、そのままで十分美味しかったです。外国から輸入されて来たトマトは形はきれいでも、味が薄くてどうして人々は味がないトマトを食べたがるのだろうと子供心に不思議に思っていました。庭の野菜の味は私の原点になっている気がします」

Koppsではベルリン近郊のポツダムの農場で育てられた有機野菜を使っている。
ここの野菜は、やっぱり彼の子供時代の野菜と同じような生き生きとした味と香りがするそうだ。私がいただいたお料理の野菜も、特にミニトマトの酸味とトマト本来の旨味のバランスが素晴らしく、幾つでも食べたいくらいだった。

 


 

Koppsでは、毎週火曜日の夜、Come togetherというイベントがある。
普段は一人ドリンク抜きで50ユーロ程度からの高級ダイニングだが、火曜の夜だけは25ユーロで3コースメニューを楽しめる。
Come togetherの特徴は、レストラン中央の大テーブルに、 Come together 参加者12人が一緒に座り、同じタイミングでコースメニューをいただくこと。
知らない人と一緒に食べましょう、という「共に食べる」イベントなのだ。

「Koppsは、開業以来料理のクオリティを上げ続けていて、クオリティを上げると必然的に値段も上がってしまう。ある時、ディナーには若い人が来ていないことに気がついたんです。彼らには値段が高くて払えない。だから、彼らが来れる程度の値段でディナーをサービスしたいということが一つ目の理由」

「二つ目には、色々なバックグラウンドを持つ人々に一つのテーブルに座ってもらい、一緒に食べて欲しいという意図があります。例えば、ビーガンもビーガンじゃない人も、興味がある人も、ドイツ人も外国人も、様々な年齢層の人たちがみんな一緒に集まって食事をしたらいいんじゃないかと思いました。夏は旅行者が多いから英語の会話がよく聞こえてくるし、冬はドイツ人が増えますね。ビーガンとノンビーガンの割合は半々くらい。私がレストランにいるときは、テーブルに挨拶に行きますが、お客さんに自己紹介をしてもらったり、一言話してもらったりすることもあります。飲み物は別なので、ドリンクを選びながら、知らない人同士の間に自然に会話が始まることもあれば、シャイなドイツ人同士、テーブルの端と端に座って、全く会話しないこともある」

 

私がCome togetherに参加した時も、最初はちょっと硬い雰囲気だったけれど、同じ鍋を囲まなくても、同じタイミングで同じ料理を食べるというだけでも親しみが湧いてきて、デザートの頃には知らない人同士、結構話が弾んでいた。

私がモロッコで長く暮らしていたためにそう感じるのかもしれないけれど、Koppsには、一見してトルコ料理やトルコ風の要素は全くないけれど、「みんなで一緒に食べる」というのがドイツというよりも、トルコとかイタリアとかギリシャとか、そういう暖かい国の人の発想だなあと思ったし、「肉を食べることがステイタスであるトルコの感覚」に反発を感じたことが持続可能性やビーガンレストランにつながって来たことがとても面白いなあと思った。モロッコ人と日本人のハーフの娘に料理の写真を見せたら、「可愛い!なんかちょっとモロッコみたい」と言っていた。

 


「大量の肉、大量生産の食品を使い捨てにしていくレストランビジネスは、これからは続いていくわけがないと思います。私たち全員が持続可能性についてもっと考えなくてはならないと思います。ビーガンの人も、ノンビーガンの人も、Koppsに来てこんな食べ方の可能性があるということを経験して欲しいと思います。
ここでは、自然発電の電力、バイオガスを使い、食品ももちろん地産地消のものを使っています。プラスチックは使わないようにしています。
例えばワインですが、9割のワインはドイツ産で、ほとんどはオーガニックかビオダイナミックのワインです。酸化防止剤が入ったワインは去年から扱いをやめました」

「毎日は、何を食べるか、どこからきたものを食べるかの決定で成り立っています。食べているものがどこからきていて、何を食べているのか、を意識しつつ、食べることを楽しむことが大事だと思う。私はたまに断食をしますが、断食すると食べ物の味や食べることの意味を実感することができ、食をより楽しむことができます」

Koppsに食事に行った時の記事はこちら。

 


 

旅行中は野菜不足になりがち。ビーガン、ベジタリアンの人はもちろんのこと、そうでない人も、お野菜をたっぷりいただきたい、という時にオススメ。観光地の真ん中にあり、アクセスも良い。

Come together
祝日や特別な日を除く毎週火曜日18:00から
3コースメニュー25ユーロ(飲み物別)
週末ブランチ:18ユーロ
夜のアラカルト
スターター5ユーロから
メイン18ユーロから
デザート12ユーロから
Kopps
Linienstraße 94
10115 Mitte Berlin
Tel.: (030) 43209775
https://www.kopps-berlin.de/en/

営業時間:
月曜〜金曜:18:00~22:00
土曜&祝日: 9 : 30〜22 : 00
日曜日:09 : 00〜18 : 00
カードOK(通常メニューのみ。ブランチ、Come togetherは現金のみ)
Come togetherは予約不可。通常のディナーは要予約。
S-Bahn Hackescher Markt から徒歩12分
U-Bahn 8 Rosenthaler Platz から徒歩4分

 

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