環境に良いことをしよう…そして節約しよう!廃棄食品専門スーパーSir Plus

Sir Plusは2017年9月にベルリンで始まったスタートアップだ。
彼らは、廃棄処分予定の食品を集め、実店舗とオンラインショップで定価の20~80%引で販売している。ベルリン市内に3店舗を構え、取り扱い商品種類は400種類、1日の利用者数は1200人、従業員数70人だ。

テンペルホーフ空港跡地にある1000平米の倉庫には、メトロなどの大手スーパーマーケット、ビオ・スーパーマーケット、卸業者、生産者などから集められた25万点の食品が保管されている。創業からの2年弱で1800トンの廃棄食品を販売した。

フラッグショップのシュテーグリッツ店で創設者のラファエル・フェルマーにインタビューして来た。

 

 

ドイツの食品廃棄の現状

ドイツでは毎年1800万トン、全流通量の1/3の食品が捨てられている。(WWF)
(日本は毎年2759万トン/環境庁)(*1)

ドイツ連邦食品農業省ウェブサイトによれば、食品廃棄物の61%が一般家庭から、17%が飲食店から、17%がスーパーなどから出ている。(*2)
2012年の調査によれば、一人のドイツ人あたり、年間81.6キロを廃棄しており、4人家族であれば、食品廃棄による金銭的損失は年間940ユーロに登る。

 

 

食品廃棄の理由は様々で、賞味期限切れ、形が悪いから、値崩れ防止、過剰生産、パッケージに傷がついたから、前日のパン、茶色くなったバナナなど・・・。フランスやチェコではスーパーマーケットによる食品廃棄が禁止され、コンポストやホームレス支援などに利用されるようになっているが、今のところドイツにはそのような法律はなく、WWFから批判されている。

 

 

環境に良いことをしよう…そして節約しよう!

Sir Plus のキャッチフレーズは”Schone die Umwelt…und spare dabei Geld!”。日本語に訳すと「環境に良いことをしよう…そして節約しよう!」。
フラッグショップがあるシュテーグリッツは、ベルリン西部の高級住宅地だ。
お店は地域のメインステーションから徒歩2分の大通り沿いの好立地、私が到着した時も何組ものお客さんが入店していた。
“環境のことを考えています、食に関して常に考えています。ビーガンです”という雰囲気の人ばかりかと思いきや、店内で買い物を楽しんでいるのは、通りを歩いている人々の構成そのままだった。老若男女、豊かそうな人から、そうでもない雰囲気の人まで。痩せている人も太っている人も、いろいろな人が混じっている。

 


(できるだけお客さんを写さないようにしたので、空っぽに見えるが、実際はたくさんのお客さんが買い物を楽しんでいた)

ベルリンのスーパーでは珍しい光景だ。
例えば、私の住まいの近所のショッピングモールにはスーパーが4つ入っている。
高級・品質重視系・激安系・ビオ系・トルコ系の四店だ。
最初に見たときは、スーパーばかり軒を並べてどうするのだろう?と思ったけれど、はっきりと利用者層が分かれるので、それぞれに需要がある。
ビオスーパーで買い物をする人は、激安系には足を踏み入れないし、その逆もない。

Sir Plus の店内には、お店のスローガン通りの「環境に良いことをしよう…そして節約しよう!」 な人もいれば、「節約しようと思ったら、いつのまにか環境に貢献していた」という人もいそうだ。

もちろん、Sir Plusを利用することが環境問題を考えるきっかけになってくれたら嬉しいけれど、本来捨てられるはずだった食品を購入することで環境に貢献しているわけだから、どんな人も歓迎する。一度利用してみれば、 Sir Plus の食品が、まだまだ食べられるものだということがわかるし、これから“賞味期限切れ”で何かを捨てようと思った時に、少し考えてもらえれば、それだけでも大きな変化だ。
”これはダメ、あれもダメ。世界にはこんな悪いことが起こっている、地球は無茶苦茶だ” というネガティブな方向からではなく、“今日も廃棄食品を救った。良いことをした、美味しく食べた”というポジティブな方向から食品レスキューを展開して行きたい。

 

賞味期限と消費期限

450平米の広い店内は、温かみのある楽しい雰囲気で装飾されている。
予想通り、有機栽培の野菜やビーガン向けの食品もあったが、DOVEの石鹸、M&M、ハーシーズのチョコレートなどのマスプロダクトもあった。冷蔵庫にはヨーグルトや生パスタ、チーズなどが並ぶが、これらは週に5回、大手スーパーマーケットのメトロ各店から引き取ってくるものだ。広い店内には、様々な食品、飲み物、生活用品が並び、これらの全てが廃棄される予定だったことを想像し驚いたが、彼らの倉庫には、実に25万点の商品が保管されているという。

 

(M&Mには、定価2.99ユーロが1.95ユーロ。35%引き。賞味期限は2019年5月2日であると書かれている)

廃棄食品をレスキューすることに意味がある。当然のことながら、ビーガン食品よりも一般食品の方が量が多く、一般食品をレスキューすることは、それだけ環境に対して意味があるから、どちらも扱うことにしている。Sir plusは大手既存スーパーマーケットの敵ではなく、彼らと助け合い共存していきたいと思っている。

 

商品紹介には、値段とそれぞれの「賞味期限」が明記されている。
「賞味期限切れ」の商品を扱っているのだから当然のことながら、一ヶ月前、二ヶ月前に期限が切れている商品が堂々と並べられている光景は衝撃だった。
買い物客たちは、じっくり説明を読んで、割引率を見て、「賞味期限とは何か」という説明ポップも読んでカゴに入れている。

 

 

賞味期限とは何か?

EUの規定によれば、「適切に保存されていた場合、味、見た目、品質が基準以上であること」
メーカーは安全をとって賞味期限を短めに設定するため、実際は賞味期限切れでもほとんどの食品が食べられる。
販売する場合ははっきりとそれを消費者に伝える義務があるだけで販売自体は合法だ。
賞味期限内の食品の品質についてはメーカーが責任を持つが、賞味期限切れの後は、販売者の判断・責任になるため、そのリスクを負いたくない販売者は廃棄してしまうことが多い。
WWFは、消費者の選択肢が増えるよう、賞味期限ではなく、生産年月日を記載することを求めている。
また、ドイツ連邦食品農業省は、一般消費者が混同しがちな「賞味期限」と「消費期限」の違いを消費者に教育する必要があるとしている。
消費期限は、肉などの「この日以降は食べてはならない」という日付だ。

 

自分の五感を信じること

消費期限がある商品は、消費期限前に食べるようにするとして、賞味期限切れの商品の本当の「消費期限」はいつのなのだろう。

若いドイツ人は、賞味期限を一日でも過ぎていたら、簡単に捨ててしまう。まだ食べられるかどうか匂いを嗅いでみることすらしない」
「私たちの祖父母の世代には賞味期限などなかった。みんな、それが食べられるのかどうか自分の感覚を信じて食べていたし、その能力があった。
例えば賞味期限を少し過ぎた食品を機械的に捨てるのではなくて、その食品が生産されるためにどれだけのエネルギーが使われたのか、立ち止まって考えてみる。その上で食べるか、捨てるか判断する。
味見をしたり、匂いをかいだりして、自分の五感を信じるという当たり前のことを取り戻したい。

 

これからの五年間

最後に、これからの五年間で何をしたいか聞いて見た。

廃棄食品をレスキューするということが特別なことではなく、一般的な普通のことになってほしいから、ベルリンの外や他のEU諸国にもフランチャイズや直営店を増やしていきたい。現在そのためのクラウドファウンディングを行なっている。また、生産者と直接繋がって、流通に乗る前に廃棄されていた形の悪い野菜などを使い自社ブランドの食品を作りたい。

インタビューがほぼ終わり、雑談をしていたら、ラファエルが「食べるということはエモーショナルなことだ」と言った。それはどういう意味なのかと聞くと、

ドイツ語のLebensmittelという言葉は、単に「食品」を指す言葉だけれど、Lebenというのは”生きる、人生、命”という意味で、もう少し哲学的な意味がある。
誰かと何かを食べること。
美味しさに感動すること。
誰かのために料理をすること。
食べたもので私たちの体ができていること。

特に都市には、自分だけの力で孤独に生きていると感じている人もいるけれど、私たちは、食べ物とつながりあって、食べ物に助けられて生きている。
人間が自然を助けるのではなく、自然が人間を助けている。
だから、食べるものをリスペクトして、何を食べているか、意識しながら生きることはとても大切なことだと思う。

 

私は肉も卵も魚も食べる雑食で、うっかり食べ物をダメにしてしまうこともけっこうある。賞味期限についても深く考えたことがなかった。
環境運動家と話をしていると、あまりにも真面目・真剣すぎて気後れしてしまうことも多いのだけれど、Sir Plusにはありとあらゆる雰囲気の人がいて、気軽に利用できるところが良いと思った。
インタビュー当日は、その後の予定があり買い物できなかったが、今度改めて買い物に行ってみよう。環境と節約のために…または節約と環境のために。

 

 

*2:ゴミの量の統計の問題
正確な数字を算出することが難しいため、政府、WWFなど引用元により異なる。例えば非可食部(バナナの皮など)を統計に含むかどうか、は統計により異なる。また、生産者によって流通前に廃棄される食品は、統計に含まれないので実際の量はさらに増えると推定されている。

*1:日本の食品廃棄物
「平成28年度の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計結果を公表しましたので、お知らせします。食品廃棄物等は約2,759万トン、このうち、本来食べられるにも関わらず捨てられた食品ロスは約643万トンと推計されました」(環境庁HPより)

参考:

WWF/Studie Bundeslaender und Lebensmittelverschwendung

https://www.zugutfuerdietonne.de/

環境省_我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成28年)

 

 

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