Tribes

「ベニ・ワレン」や「ボ・シャラウィット」は日本でも結構知られるようになって来ました。さて、日本語で表現するとどんなカタカナを使おうか迷ってしまう不思議な発音のモロッコのラグの名称。それぞれどんな意味かご存知ですか?

モロッコのラグの名前は、地域名、部族名、または織り方の種類で名付けられています。


ベニ・ワレン(Beni Ouaren)

  • Beni・・・・とかAit・・・・と言うのは、アラビア語やベルベル語で、「***と言う人の子孫たち」とか「***から来た人々達」と言う意味で、田舎の地名に良く使われます。
  • ベニ・ワレンとは、モロッコ北部のタザという街(マルシェバッグの産地です)の近くの、ベルベル人の部族、ベニ・ワレン族によって織られるラグのこと。
  • 毛足の長いもの、ナチュラルな色合いのもの、染織されているもの、マントなどいろいろありますが、最近では「ベニ・ワレン」と言えば、ふかふかの無染色のオフホワイトのウールにこげ茶や黒で抽象的な模様を織り込んだ毛足のあるタイプのカーペットをさすことが多いです。
  • もともとベニ・ワレンの女性たちの花嫁道具として、婚約から1年の準備期間に織られたもの。遊牧生活の中で、テントの中の寝具として使われていたものです。
  • 柔らかい子羊のウールが使われることが多く、手触りが最高。裸足で歩くと本当に気持ちが良いです。
  • モロッコと言うと暖かいイメージがありますが、ベニ・ワレンの産地はアトラスの山の中。冬は雪が積もるような地域のため、かなりしっかり厚みがあります。

ゼモール (Zemmor )

  • モロッコ北部、ラバトとメクネスの真ん中にあるケミセットという町の周辺で暮らす、ベルベル人の一族、ゼモール族によって織られるラグ&カーペットです。日本では、モロッコのラグというとベニ・ワレンラグなどが有名ですが、昔からヨーロッパで知られているのは、ゼモールの赤・黒・白のボーダーラグです。
  • 今でもたくさん織られており、ケミセットでは週に一回、木曜日にラグの競り市が開催されています。
  • 大量に出回っているため、博物館級の美しいラグから、お土産クオリティの大味なものまで、様々なゼモールラグがあります。
  • ゼモール族は元々半遊牧生活を送っており、長さ280cm程度、幅170cm程度の大判ラグはテントの床に敷かれ、ベッドとして使われていたものです。
  • 家族の数が多ければ多いほど、大きなテント、長いラグが必要だったため、古いものはかなり大きいものが多いです。
  • かなり長いものは、半遊牧生活を送っていた頃の、長さ200センチ程度のものは、定住生活に入ってからのゼモール族によって織られたものであることがわかります。
  • ゼモールの平織りラグは、一見すると一旦織り上げた後に刺繍を施しているように見えますが、一段横糸を通すたびに模様の色の糸を結びつけるという非常に手間のかかる手法で織られています。

タズナフト (Taznakht / Ait Ouazguitte)

  • ワルザザート近郊の村、タズナフトで「アイト・オウズギット族」によって織られる毛足のあるカーペットです。昔、天然染色が行われていた時代にこの地方で取れた「ハリエニシダ」で染められた黄色やオレンジを使用していたため、伝統的に縦糸、横糸は黄色からオレンジ系の色が用いられます。フリンジは片方のみ、左右対称のクラシックなデザインが殆どです。
  • この地方では、ラグ&カーペットの生産が盛んで、古いものから、新しいものまでモロッコ全土のラグ&カーペット店に出回って居ます。新品は、かなり色遣いがきついものが多く、色柄が美しくないものが多いため、ディアモロッコでは主に古いものを扱っています。
  • 元々、遊牧生活をしていた人々のラグ&カーペットですので、アンティークと言ってもどれくらい古いのかは分かりません。かなり古いものの中には、天然染色だと思われるものもありますが、天然染色100%であることが証明できないため、特に書いていません。

ボ・シャラウィットラグ Bocharawitte

  • カラフルで美しい色使いが特徴の古布の裂織り・リサイクルラグです。
  • アラビア語で「ボ」はお父さん、「シャラウィット」は布きれの事。ボ・シャラウィットという可愛く不思議ななまえは、「布を集めたもの」というようないみを持ち、モロッコ中の田舎で織られています。
  • リサイクルやエコが注目されるずっと前から、田舎のモロッコ女性たちは、古着や古布をつかい美しいラグを織ってきました
  • 縦糸には、太く縒ったコットンを使い、裂き布の横糸を通し、毛足になる布を結びつけていきます。織り機自体も、適当な棒を使って組み立てることが多いので、サイズは適当。ウールを使ったラグの場合、ベルベル人の伝統的な柄が織り込まれることが多いのですが、ボ・シャラウィットは、即興的に自由にデザインされたものがほとんどです。
  • 素材は織り手自身や家族が着ていた古着。最近では売るためのボ・シャラウィットも織られますが、元々は家族で使うために織られてきたもの。ウールの細かな模様が織り込まれたラグが、嫁入り道具としてのよそ行きのラグだとしたら、ボ・シャラウィットは気取らない普段着のラグ。だからこそ、織り手の個性が自由に現れる、個性と魅力があります。

アップサイクル

  • “アップサイクル”という言葉をご存知ですか? “リサイクル”は古いものを単に再利用する事ですが、アップサイクルは古いものを使いオリジナルの上を行く、更に魅力的にされたもの、という意味です。
  • 古布、古い木、様々な古い素材は、新しいものよりも上質だったり、時間を経て良い色になっていたり、柔らかさを増していたり、新しいものよりも魅力的な事が多いです。
  • それらの素材を使って、今の暮らしに合う更に魅力的なものを作ろうと言うのがアップサイクル。織り手の女性たちは、「アップサイクル」とか「リサイクル」という言葉を意識していないと思いますが、ボ・シャラウィットラグもその一つです。
  • ボ・シャラウィットラグを手に入れたら、遠くからみて、雰囲気を楽しみ、座ってみて、触れてみて、そして使われている生地をじっくり観察してみてください。水玉が多かったり、キラキラひかる生地が使われていたり、一枚一枚個性があって面白いですよ。
  • ディアモロッコのボ・シャラウィットラグは、仕入れ後、全てクリーニングし、弱くなっている箇所などを修復しています。
  • ボ・シャラウィットラグは、古布で作られているため、ラグになる前に、何度も洗われて、既に落ちる色は落ち、縮んでいるので、これから色落ちする事も縮む事もありません。おうちで洗えます。
  • お天気の良い日に浴槽にぬるま湯を張り、手洗い様洗剤を適量加え、後はざぶざぶ押し洗い。
  • 小さいものは洗濯機の手洗いコースでも洗えますが、糸くずが大量に出るので、洗濯機の種類に寄っては難しいかもしれません。良くすすいだ後は、平らなところに干して下さい。ベランダの柵などでも大丈夫ですが、水がぼたぼた垂れるのでご注意を。 しっかり乾かして下さい。

ベニ・ムティール Beni Mtir / Beni Mguild

  • Beni Mtir / Beni Mguildラグの産地は、モロッコ北部、ミデルトとフェズの真ん中あたり。
  • この辺りは、南北に長く気候の変化に富んだモロッコの中でも特に穏やかな地域として知られ、古代ローマ時代から伝わるオリーブとワイン用の葡萄の栽培で有名です。春先には一面の花畑、秋には農家の軒先で昔ながらの石臼を使ったオリーブオイル造りが行われ、畑では黄金色に輝く小麦や大麦の収穫が行われます。
  • 現代ではほとんどの人が定住生活を送っていますが、ほんの50年前までは、春から秋までの暖かい季節は遊牧生活を送り、冬の間だけ町や村に定住するという半遊牧生活をする人々が珍しくありませんでした。
  • 彼らの古いラグは、遊牧生活のテントの敷物として、家畜のサドルカバーとして使われるために織られました。
  • 彼らのラグは、モロッコ各地のラグ&カーペットの中でも、特に色遣いが美しい事で知られます。Beni Mtir / Beni Mguildの産地は美しい自然や風景に恵まれており、ラグの織り手のこの地域の女性たちの感性が、美しい環境から育まれたものであることが感じられます。
  • 私は個人的にここのラグが大好きで、産地の問屋に買い付けに行ったり、実際に織られていると言う村を訪ねたりしたことがありますが、残念ながら、最近では伝統的な色使い・柄行きの大判平織りラグはあまり織られていないとの事。理由を尋ねると、「遊牧民がほとんど居なくなったから」だそうで、たしかに現代の暮らしには、巨大な床敷きの平織りも、サドルカバーも必要ありません・・・。
  • 一枚一枚のラグの正確な年代は分かりませんが、Beni Mtir / Beni Mguildのアンティークは、数十年前のものから、中には100年位経っているものまで。今でもラグの生産が盛んなゼモール等では、新品を古く見せかけたものもありますが、Beni Mtir / Beni Mguildに関しては新品がほとんど出回って居ないので、全て一定以上の年月を経ているもの。本物のモロッコのアンティークラグを手に入れたい方におすすめです。貴重な一枚ですから、大切にしてくださる方にご購入いただければ、と思います。

1 comment on “Tribes

  1. Pingback: Moroccan Rug&Carpet | Dear Morocco * One

Comments are closed.