邪視のお話

モロッコ。
フォトジェニックな国だから、イメージ重視で語られることが多い国だけれど、どんな文化でどんな人が暮らしている国なのかは、あまり知られていません。

モロッコ的な文化。
私がモロッコで、最も”異文化”を感じるのは「邪視」という考え方。

「邪視」ってなんとも禍々しい見た目と響きの言葉ですが、簡単に説明すると人の視線やほめ言葉には、本人が意識しているかどうかは関係なくネガティブなパワーを持つ「妬み嫉み」が含まれていて、褒められた人、じっと見つめられた対象に厄災をもたらすという考え方です。

最初に聞いた時びっくりしましたが、モロッコに限らず地中海文化圏一帯に共通する考え方で、トルコのお土産として有名なナザールボンジュも「邪視よけの目」、モロッコやトルコのカーペットなどに見られる二重のひし形模様もネガティブな視線を跳ね除けるためのもう一つの目ですし、イスラム圏でよく見かける手のデザイン、「ファティマの手」や、5本指を表す数字の5、5がテーマのデザインは全て邪視よけのデザインです。

例えば、新しいコートを着て会社に行きました。
同僚に「新しいコート?素敵だね」
と言われました。
モロッコ的に正しい反応は
「あなたの方が似合いそうだからあげるわ」
です。
褒められたコートにはネガティブなパワーが宿ってしまったので、そのまま着続けていると悪いことを引き寄せる。だからもう着られないのです。
特に気をつけなくてはならないとされているのが、女性のいちばんの幸せとされている結婚、妊娠、出産。
伝統的な嫁入り道具である手織りラグは、邪視よけのデザインで埋め尽くされていますし、人生の節目節目に行うヘナタトゥーにも邪視よけの意味があります。
私が男子を出産した時に驚いたこと・・・それは赤ちゃんを見に来る人が、満面の笑みで「臭い臭い」と言うことでした・・・
褒めたいのだけれど褒めてはならない文化なので「可愛い赤ちゃんですね」という代わりに「臭い子ね〜」ということになっているのです。

様々なイベントごとに、赤ちゃんへの「臭い臭い」のようなTPOに応じた言い回しがあるのですが、外国人にはなかなか使いこなせません。
ちなみに女子を産んだ時は、「女の子の方が育てやすいし」「まだ次があるから」と、本気で慰められたのでした・・・

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