褒めて伸ばすピアノレッスン

(子供のピアノについての記事ですが、私は素人なので音楽用語など間違っているかもしれません)

娘がピアノを習い始めて丸2年経ちました。
今年の夏休み前まで、マラケシュのフランス人の先生についていたのですが、色々と事情があり辞めてしまい、今はベルリンの小宮尚子先生に不定期にみていただいています。

マラケシュの先生をやめた理由ですが、
まず、娘の進度が他のモロッコ人の子どもと比べて早いので、他の生徒の親からクレームが来るからもっとゆっくり進めたいという話があった事。

もともと、1週目読譜(弾かない)2週目右手練習、3週目左手練習、4週目左右合わせる、5週目両手、6週目終了。これを2,3曲平行で進めていきます。簡単な曲でも、絶対にこれだけ時間を掛けるので、今までに弾いた曲数が極端に少ないことは、気になっていました。(先に練習をすると怒られます)これ以上ゆっくり進めると、娘のピアノに対する興味が無くなってしまいそう、そもそも、個人レッスンなのになぜ他の子供と進度を合わせなくてはならないのかという疑問。

ゆっくり進めるのであっても、それだけ一曲を丁寧に仕上げて行くのであればいいのですが、45分のレッスンのうち15分ほど雑談、あとの30分は、何回か弾いておしまい。細かな指導がなく、5月に小宮先生のレッスンを受けたあと、娘自身が物足りなくなってしまったこと。

フランス人の先生はバッハが大嫌いと公言されていて、インベンションのレッスンも、「これは指の運動みたいなものだから何も考えずにとにかく指をよく上げて弾けばいい。それよりももっと大切なロマン派の曲がたくさんある」と仰有り、インベンション1に入ったときも、ただ両手でそれなりの速さで弾けるようになったら終了でした。

最後に、夏休み前に決まっていた新学期のレッスン時間を、有力なモロッコ人の子どもの横入りのために変更された事。

マラケシュの子供の習い事としてのピアノ事情は・・・日本では考えられない世界です。7歳くらいで入門する子供が多いのですが、練習しないので、5年生、6年生までメトードローズというバイエル上巻のような教本を弾いている子供がほとんど。

発表会で他の子供達の演奏を聴くと、テンポが無茶苦茶。焦って早くなってしまうとか、難しいところが少しゆっくりになってしまうとかではなく、八分音符と十六分音符を同じ早さで弾いたり、得意な部分だけ超速、あとはゆっくりだったりで、どんな曲か分からない。

日本であれば、先生とどうしても合わなければ他の先生を探すという選択肢がありますが、マラケシュではそれも難しく、何より娘が5月にベルリンの小宮先生のレッスンを受けて以来、先生のことが大好きになってしまい、マラケシュの他の先生にはつきたくないと言います。

ヨーロッパには、素材の買い付けや雑貨やインテリアをチェックすること、クラシックやバレエのコンサートに行くこと、和食を食べること、和食材を買うことが目的で時々行っていたのですが、ベルリンにはその全てが揃っています。

おまけにパリやロンドンに比べると物価が格段に安く、マラケシュからLCCで片道5千円から1万円ほど。

モロッコ人の国境の感覚は日本とは異なり、例えば「母親がパリの病院に入院しているから毎週末お見舞いに行っている」という人がいたり、アパルトマンの大家さんがパリ在住で契約のためにマラケシュに帰ってきたり、セールや子供達のバカンスの時期に合わせてヨーロッパの親戚を訪ねる人もたくさんいたりします。
逆に、週末を暖かいマラケシュで過ごすために訪れるヨーロピアンもたくさんいます。

ベルリン在住の友人は、息子さんの少年サッカーの練習試合のために仕事がお休みの週末はドイツ各地、時には国境を超えて日帰りでお隣の国に行くとか。また、物価や家賃の安いヨーロッパの某国からLCCでロンドンの大学に通う学生が居るとか・・・(物価が高いロンドンに住むよりもLCCで往復したほうが安いため)

なので、数ヶ月に一回、私の仕事のついでに子供を連れて行くのは、それほど難しい話ではありません。

ですが、娘には

151209_01「まだブルグミュラーのあなたが、わざわざ外国まで行って、見ていただくのはとても特別なこと。自分で決めた曲数を、自主的に進んで練習して、それなりに弾けるように出来ないのであればレッスンには行きません。ピアノのために、成績が落ちるのもダメ。ママは仕事もあるし難しくなってきたから手伝えない。
一人で頑張って、時々ベルリンで見ていただくか、マラケシュで他の先生についてのんびりやるか選びなさい」

と話したところ、絶対に小宮先生に習いたいということだったので、先生にお願いして不定期にレッスンしていただくことになりました。
夏休み開けの9月下旬から、今回のレッスンまでの二ヶ月間、習い事がある日やテスト前などは30分ほど、普段は1時間強、グランドピアノが借りられる日は2時間ほど、週に10時間くらいは練習していたようです。
「一人でやる」と約束したとおり、コツコツと一人で右手練習、左手練習、最初に始めた曲がある程度弾けるようになったら次の曲・・・と練習を進めていき、レッスンには次の10曲を用意していきました。

インベンション10番、11番
ブルグミュラー:小さなつどい、無邪気、進歩
ソナチネアルバム:1番第一楽章、7番全楽章、ベートーベン49-2の第二楽章。
(インベンション11番はまだ難しすぎるので一旦お休み、ベートーベンは次回ゆっくり見ていただくことになり、8曲をレッスンしていただきました)

二ヶ月、自分で練習するというのは大人でもなかなか大変。
私の時間がある時は、ピアノの近くに座ってメトロノーム代わりをしてやったり、聴いて感想を言ったり、録画して先生にお送りして見ていただいたりしていましたが、基本は一人練習。よほどベルリンに行きたかったようです。
(子供の自主練なので、どんどん自己流になってしまい、運指や音を間違えたまま暗譜してしまい、かなり直されていました)


「褒めて伸ばすピアノレッスン」

今回のレッスン初日の弾き始めは、緊張していたのか、素人耳にも痩せた音で、見学している私もいたたまれない様な演奏でした。それでも先生はネガティブなコメントは一切おっしゃらず、練習してきた曲を丁寧に全曲聞いてくださった後、「よく一人でこんなに練習してきましたね。偉いわね」という褒め言葉からレッスンスタート。

それで娘の心が開けたのか、時間が経つにつれてどんどん音が綺麗になってくるのが感じられます。

「そうそう、とってもよかった」
「今までで一番いい音」
「とても良くなった」
「きれいね」
「とても大人っぽく弾けたね」
「よくできました」
「今ね、間違っちゃったところあったでしょ?でもあれはそんなに気にしなくていいのよ。それよりも音楽的に表現できた事のほうがずっと大きいのよ」

などのたくさんの褒め言葉の後に、「でもね、もっときれいに弾ける様にするためにここをこうしてみようか・・・」と、細かなご指導が入るのですが、最初に褒めていただくので、子供はとてもリラックスして、のびのびと表現することができる様になります。

例えば娘がたっぷりと間を開けて弾きたいと思って弾いた箇所があった場合、→「**ちゃんは、ここをこんな風に弾きたいのね。その場合は、つなげて弾けば開けてもいいのよ。弾いてみれる?」→「上手になったわね。とてもきれいに弾ける様になったからじゃあ、今度は自然に聴こえるように間を大げさに開けないで弾いてみようか?」という感じで子供の自尊心を傷つけない方法でいつの間にか正しい弾き方に直されています。

本当に細かいところまで直されるのですが、でも「できていない」「なんで間違えるの?」という様なネガティブな言葉は一切ありません。

テクニック的な面も、短く効果的な練習をその場でさせ、苦手箇所が15分ほどで弾けるように・・・

今回は、曲数が多いので一回に二時間見ていただいたのですが、普通に考えたら9歳の子供にとっての二時間はかなり長い時間のはず。でも、娘は先生の熱心さに惹きつけられ、演奏中、先生と体の動きがシンクロするほど集中していました。
とにかく先生が大好き、レッスンが楽しい様で、毎回ベルリンでレッスンを受けるたびに、最終日のレッスン後は半泣きです・・・。
ピアノが上達するということだけではなく、ここまで暖かく、誠実、真摯に娘と接してくださる「先生」は今までいなかったので、子供心にいろいろ感じるところがあるのでしょう。

見学する私も、子供が楽しみつつも真剣にピアノに取り組む様子を見ることができるのは本当に癒されるひととき。
レッスンを通して、ピアノの上達だけではなく、コツコツと努力する喜び、細かいところに神経を使って一つの作品を仕上げていくこと、美しい音色を出せた時の喜び、大人(先生)に大切に丁寧に扱われることを経験している様子を見ると、良い先生に出会えて本当によかった、と思います。


今回のレッスンでは、

指と手の形、動き
手首の柔らかい使い方、力の抜き方
レガートを綺麗につなげる
三度のレガート
ピアノ(P)の弾き方。ピアノらしい音を出しつつ、客席の一番後ろまで聞こえる音を出す。
フォルテを弾く時の体重の掛け方
曲の終わり方。第三楽章まである曲の、第一楽章、第二楽章、第三楽章の表情の変え方、最後の締め方
フレーズの目的地、音を引っ張っていくこと、メロディーの引き立たせ方、左右のバランス

などを丁寧にご指導いただきました。


 

Bach Invention 10 ///バッハ 二声のインベンション 10番

レッスン前:
八分音符はスタッカート気味に弾くものと思い練習スタート。途中で先生から「メロディの部分はレガートで弾いて良い」というご指摘がありましたが、くせがついてしまい自力で直せませんでした。

レッスン後:(途中でiphoneが容量いっぱいになり切れてしまっています)

元がひどかったこともありますが、かなり音楽的に弾けるように。


ブルグミュラー「進歩」
レッスン前:
左右の音がバラバラ、一本調子、音もたくさん間違えています。
でも、本人は気持ちよく弾けていると思っていました。

レッスン中:

テンポ
左右のバランス(右手メロディを目立たせる)
左右の音をきっちり合わせる
スタッカート部分跳ねる
終わりの雰囲気を出す

ブルグミュラーは、本人のレベルに合っているようで、勉強になる要素が多く、曲が短くレッスン後とても美しくなるので本人も気に入って弾いています。今回4番、5番もレッスンしていただき、三度のレガート、メロディーをレガートで美しくつなげるテクニックなどを習いました。


ソナチネ1番

レッスン前:

レッスン後:
指使いが自己流になっていた部分を修正。音の間違え。
強弱をしっかりつける。ためた時はレガートで美しくつなげる。息遣い。
左右のバランス。
不安定だった音階の部分、15分ほど練習をしたら弾けるようになりました・・・
最後の終わり方。


ソナチネ7番第二楽章

7番は、全楽章練習していきました。全て見ていただきましたが一番時間をかけたのが第二楽章。
1、2、3楽章続けて弾く際の気持ちの切り替え方。
普通、子供は1、3楽章のような明るい曲調を好むものだと思いますが娘は第二楽章のちょっと悲しい雰囲気が好きなようで、第二楽章を引きずったまま第三楽章を弾き始めて何度も注意されていました。

メロディをレガートで美しく弾く・手首の使い方
同音が続く部分(レレレレー)の美しい弾き方
指使い
三度のレガート
テンポ、左から右にメロディーを受け継ぐ部分

レッスン後:ソナチネ7番第二楽章、第三楽章

相変わらず、三度のところはもたもたしたり、間違えたり、途中ゆったり間をとるべき部分を走ったりしていますが・・・レッスン前とは全く別の曲のようになりました。

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先生のレッスン室。
窓から緑が見える夏も素敵でしたが、窓の外がグレーの冬もこのお部屋の中はあたたかい雰囲気でインベンションがよく似合い素敵でした。あたたかいお茶をいただきながら、100年前のブリュートナーの音色を楽しむのは、付き添いの私にとっても至福のひととき。

このお部屋の雰囲気や天井の高さ、美しい音色を経験するだけで娘にとっても豊かな経験だなあと毎回思います。

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